沖縄の市町村における業務継続計画策定状況(令和元年度)

 地震などの大規模災害が発生したとき、地方自治体は災害への応急対策や復旧・復興を担うと同時に、通常業務も処理しなければなりません。災害時には電気や通信機器が使えず、さらに庁舎が被災するといった要因が重なり、急激に増えた業務を処理することが困難になります。かといって被災したから業務はできません、ではその地域の復旧・復興が何もできなくなってしまいます。

 そこで災害時にも地方公共団体の業務を継続させるために検討すべき事項のマニュアルが、内閣府で2010年に策定されました。その後見直しが行われ、2016年に「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」が出されています。

 消防庁では、これにあわせて地方公共団体における業務継続計画の策定状況を毎年公表しています。今年の状況はまだ未発表ですが、大学で防災の授業をする際に使うため、2019年12月に公表された資料を分析し、沖縄県の自治体の状況を全国と比較しました。

地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果(令和元年12月26日) https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/011226bcphoudou.pdf

 まず沖縄県41市町村の中で、2019年12月に業務計画を策定済の市町村は31団体です。これは県内市町村の76%です。全国47都道府県中、上から42位です。

 さらに策定した市町村でみても、3要素以下の団体が45%と、ほぼ半数の市町村で計画に定めるべき重要6要素を半分以下しか策定していません(図1)。ここで計画に定めるべき重要6要素とは、「①首長不在時の明確な代行順位および職員の参集体制」、「②本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定」、「③電気、水、食料等の確保」、「④災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保」、⑤「重要な行政データのバックアップ」、そして「⑥非常時優先業務の整理」です。

 全国では、3要素以下しか策定していない市区町村は22%です。沖縄の市町村では策定が全然進んでいないことがわかります。

(図1)計画に定めるべき重要6要素の策定状況

 

 では、上記6要素のどの策定が遅れているのでしょうか。そこで沖縄の市町村の6要素の策定状況を全国と比較しました。6要素のうち、「③電気、水、食料等の確保」はさらに「③-1非常用発電機」、「③-2燃料」、そして「③-2水・食料等」に細分されています。「⑥非常時優先業務の整理」は「⑥-1非常時優先業務の特定」と「⑥-2非常時優先業務ごとの役割分担等」に細分されています。

 グラフから、全体的な傾向は沖縄も全国も似ていることがわかります(図2)。「①-1首長代行」と「①-2参集体制」は90%以上であるのに対し、「③-2燃料」と「③-2水・食料等」は沖縄も全国も40~60%と低迷しています。

 いっぽう、沖縄が全国と違う点もあります、まず、「③-1非常用発電機」は全国よりも高くなっています(沖縄:80.6%、全国:75.2%)。いっぽう、「④多様な通信手段」、「⑤バックアップすべき重要な行政データ」、「⑥-1非常時優先業務の特定」と「⑥-2非常時優先業務ごとの役割分担等」は全国よりも10ポイント以上低くなっています。沖縄の場合毎年強い台風に見舞われるため、その際に発生する停電の対策として発電機を準備しやすかったのかもしれません。いっぽう、台風災害ではあまり問題にならなかった課題(特に⑤と⑥)については対応が進んでいません。④については機器の話なので、予算を付ければすぐに解決できそうですが、なぜ遅れているのかわかりません。

(図2)計画に定めるべき重要6要素の各項目の策定状況