沖縄は地震が少ない?


 防災科学技術研究所の地震動予測地図をみると、30年間に沖縄本島(那覇)で震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は4〜18%となっています。これは全国的に見て平均的な値より高くなっています(2007年4月、地震動予測地図が更新されました。その際、沖縄本島の確率は以前のものより大きくなりました)。


  
(左:日本列島全体で30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率。右:沖縄本島で30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率)


 また、地震保険料率でも、沖縄県は2等地となっています。この等地とは、地震のリスクに応じて都道府県を1等地から4等地の4段階に分類したもので、1等地が最も地震リスクの低い地域となっています。2006年に等地の改定が行われる前、沖縄は1等地でした。最もリスクの低い部類に入っていたのですが、改定後は1階級上がってしまいました。


(地震保険の等地区分。左:改定前、右:改定後)

 これは、地震の研究が進むにつれて、地震の起こる可能性に関するデータが集まってきたことが大きく影響しています。地震保険料率や建物の地震地域係数は地震危険度を元に判断するのですが、これまでは過去に発生した大地震だけを使って危険度を決めていました。しかしこの方法では、沖縄のように過去の記録が不十分な地域ではデータが少なく、誤った結果になりがちです。そこで最近では小さい地震の起こり方を含めて分析しています。

 このように、沖縄が地震の大きな揺れに見舞われる可能性は全国で最も低い、ということはありません。あくまでも全国平均程度です。

(その後)
地震保険の等地区分が2014年に見直されました(地震保険の等地区分の変遷)。それまで4区分であったのが3区分になりました。沖縄県は2等地で、真ん中です。


 沖縄本島で石垣が崩れるくらいの揺れに見舞われた(震度5以上に相当)のは1926年6月29日が最後です。それから80年間、震度5以上の揺れに遭っていません。だから沖縄は地震危険度が低いといっていいのでしょうか?

 そもそも一地域だけで見ていると、大地震にはなかなか遭わないものです。例えば神戸市は、1916年から兵庫県南部地震が起こった1995年までの約80年間、震度5以上の揺れに見舞われていません。

 大地震の発生頻度は低いので、100年程度の期間で多い少ないを判断するのは危険です。たとえば沖縄本島(那覇)では、1926年以降(約80年間)では震度5以上の揺れはないのですが、1880年以降(約120年間)だと震度5相当の揺れが4回起こっています。

 だから最近沖縄本島で震度5以上が観測されていないからといって地震危険度が低いとはいえません。

 ちなみに、本当は期間が短いのですが、過去120年間に震度5以上の揺れが4回起こっていることを使うと、1年間に震度5以上の揺れが発生する確率は3.3%となります。30年間だと約63%となります。地震動予測地図によると沖縄本島の那覇(首里付近)で30年間に震度5弱以上の揺れに見舞われる確率は約48%です。これは大雑把な見積もりですが、それでも地震動予測地図と似た値になることから、地震動予測地図で出されている数字は妥当であるといえます。


 建築物の耐震基準として地震地域係数があります。沖縄は地域係数が0.7と全国で最も低くなっています。東京は1.0です。大事なことは、この係数は1981年に制定されたものであるということです。当時は沖縄の地震活動についてほとんどわかっていませんでした。不十分なデータを使って決めたために、地域係数が過小評価になったと見られます。また、沖縄がアメリカの施政権下にあったときに用いられていた低い耐震基準を改定する際、改定前後で建物の耐震基準が大きく食い違うことを防ぐために、大幅な変更を行わなかった可能性もあります。

 さて、現在日本列島全体の地震危険度を見るのに最もよいマップは、上で挙げた地震動予測地図でしょう。すでに述べたように、沖縄の地震危険度は全国平均程度です。一方、沖縄の建築物は全国で最も低い地域係数で作られています。この2つから、沖縄の建築物は大地震のリスクに対して他地域より弱く設計されているといえます。

[戻る]