・概要
(1)目的
建築物の構造計算では、建築物が地震によって受ける力(地震力)を考慮して
設計がなされる。 地震活動は地域ごとに異なるため、地震活動の違いを地震地域係数として
考慮し、地震力の計算をおこなう。 大きな地域係数は大きな地震力が建物に働くことを
想定することになるため、大きな揺れに強くなる。地域係数は大地震の多い地域では大きく、少ない地域では小さく設定されている。 例えば地震活動の活発な東京では1.0と大きな値になっている。
一方、沖縄の地域係数は0.7と全国でもっとも小さな値に設定されている。これは
沖縄での地震危険度が低いと考えられているためである。
しかし地震分布を見ると、南西諸島の地震活動は九州地域と 同程度で活発である
(M4以上の地震分布)。
そこで九州から南西諸島にかけての地域で、地震活動度および、ある期間・ある確率で起こりうる最
大の地震動(加速度・速度)を調べ、沖縄の地震危険度を九州地域と比較した。
(2)解析方法
まず、南西諸島の地震活動モデルを作る。 大地震は空間・時間的にランダムに起こるものとする。ただし、大地震の発生
確率は、過去の地震活動にあわせて場所ごとに変化させる。
次に、地震活動モデルを使って、一定期間にある大きさ以上の揺れ(加速度・速度)に
見舞われる確率を計算する。天気予報でいう降水確率に相当する。 この結果を使い、一定期間にある確率で起こる揺れの大きさを計算する。
計算で使われる地震動は、基準地盤(岩盤に相当する程度の固い地盤)での最大加速度 または最大速度である。地表付近の地質によって地震動は増幅する。平野や埋立地 では地震動は約2倍になり、震度は階級が1増加する。
(3)解析の結果
南西諸島から九州地域にかけての深さ40km以浅でM5クラスの地震発生率は0.02-0.25個/km2/年である。南西諸島と九州地域の地震発生率に
顕著な違いは見られない。活発な地域に相当する(
地震活動度)。特に八重山諸島は地震活動度が高い。
・50年間に10%の確率で予想される震度は九州中部地域から南西諸島まで5弱から5強で
ある(図)。
同期間・同確率での大東島の予想震度は3である。
・50年間に2%の確率で予想される震度は九州中部地域から南西諸島まで5強である
(図)。 同期間・同確率での大東島の予想震度は3である。
・那覇、平良、石垣島、与那国島を襲う大地震は、近傍で発生するM6後半〜M7前半の
浅い地震か、またはM7クラスのやや深い地震である可能性が最も高い。
(4)どんなことがいえるか
沖縄本島から多良間島で予想される地震動は九州地域とほぼ同じである。 このことから、沖縄本島から多良間島の地域係数
は九州中部〜南部での係数(0.8〜0.9)と同じ値が妥当であると考えられる (地域係数の図)。
また、八重山諸島で予想される地震動は九州東部と同レベルである。 八重山諸島の地域係数は九州東部と同じ値(0.9)が妥当であろう
(地域係数の図)。
このように、沖縄県の地震活動度は九州中南部と変わらない。よって、 沖縄県の地震地域係数は九州中南部地域と同レベルにすべきである。
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