(2008.5.31 緊急地震速報について追加)
2008年4月20日、宮古島北西沖でM5.2の地震が起こりました(図)。深さは32km(気象庁)です。宮古島で最大震度4が観測されています(図)。この地震で、緊急地震速報(警報)が初めて発表されました。
この付近では、2007年4月20日にM6.7を最大とする地震活動が沖縄トラフ内でありました。
琉球弧内で発生した正断層型地震です(図)。北東−南西方向に拡張軸が向いており(図)、沖縄トラフ内の地震とは異なっています。琉球弧島弧を横断・断裂させている正断層の活動です。
本震・余震分布は下地島の西方に北西-南東走向で並んでいます(ただしこれは震源決定の影響かもしれませんが)。宮古島に多い北西−南東走向の断層と同じ走向です。
深さ(km) | マグニチュード | |
---|---|---|
気象庁 | 32 | 5.2 |
防災科学技術研究所 CMT解 |
20 | 5.1 |
USGS | 35 | 5.1 |
(図1) 震源付近の地震分布。2002年から2007年まで、M3.0以上(気象庁による)。丸印は震源を表す。丸の色は震源の深さを示している。
☆は本震の震央を示す。等深線は沈み込んだフィリピ海プレートの深さを示している。
(図3)地震のメカニズム解、防災科学技術研究所による(2000年以降、M3以上)。下半球投影。メカニズム解は深さ毎に色分けしている。深さ50kmより浅い地震を表示している。
(図5)余震分布。
○4月28日の地震の緊急地震速報について
4月28日の地震では、緊急地震速報がテレビ等に流される6秒前に、主要動(S波)が宮古島に到達しました。これは震源が宮古島に近かったために緊急地震速報が間に合わなかったためなのですが、では、もっと早く警報を出すことは可能でしょうか。
@ 観測点の数を増やす・・・・あまり改善しない
早く警報を出す方法の一つは、観測点の数を増やすことです。しかし沖縄の場合、陸上点を増やしてもあまり効果はありません。
今回の地震の場合、宮古島(市街地)にP波が到達したのが32分14.5秒です。震源に一番近かった下地島にP波が到達したのは、計算だと32分13.0秒となります。沖縄では観測点が島内に限られるので、島内に地震計が密に配置してあったとしても、時間短縮効果は約1.5秒にしかなりません。
A 緊急地震速報の第1報を利用する・・・・主要動と同時
他の方法として、緊急地震速報の第1報を使用するという方法もあります。宮古島で震度5弱という予測を出したのが第3報で、32分25秒です。第1報(震度4と予測)は32分19秒に出されています。これは主要動であるS波が宮古島に到達した時刻とほぼ同じです。精度が悪いことと震度がやや小さくても出してしまうことを承知の上でこの予測を利用すれば、震度4程度の揺れになるということぐらいは警報で出せたかもしれません。地震のマグニチュードが大きかった場合は、この段階で緊急地震速報の警報が放送されたでしょう。
しかし第1報を利用した場合でも、宮古島ではS波到来と同時にしか発表できません。放送局を経由する時の伝送遅れがあることを考えると、やはりS波の後に放送ということになってしまいます。@を合わせても、宮古島では主要動と同時にしか発表できません。
B 自分の家で地震情報を出す・・・・・最も効果大
宮古島では32分14.5秒にP波が到達し、その後32分19秒にS波が到達しています。P波とS波の到達時間差は4.5秒です。現在の技術では、P波到達から約1秒でその地点での揺れの大きさを予測することが可能です。もし宮古島の人が家に地震計を置いておけば、32分15.5秒に震度4〜5弱の揺れが来るという情報を出すことができます。これは主要動の来る3.5秒前です。現在このようなシステムはすでに販売されており(約7万円)、やろうと思えば直下地震であっても自分の家で地震波を検知し大きな揺れに備えることは十分可能になっています。
ということで、震源が遠距離であれば気象庁システムで良いのですが、至近距離で起こった地震では、気象庁のシステムでは間に合いません。さらに沖縄の場合、観測点を小さな島の中にしか置けない(島に住んでいる人にとってみれば、自分の家に地震計を置いて観測しているのとあまり変わらない)という悪条件のため、改善するのは困難です。自分の家で地震情報を出す方法と気象庁の緊急地震速報とを組み合わせるのが最も効果的だといえます。