GPSでみた南西諸島の変形
南西諸島の現在の変動を調べるため、南西諸島に設置されている国土地理院のGPSデータを解析した。
図1 南西諸島の地域区分。沖縄本島と宮古島の間にはケラマギャップがある。ケラマギャップを境に沖縄本島側が中琉球弧、宮古島側が南琉球弧である。ケラマギャップで南西諸島の地質構造が食い違っていることから、現在でもここで中琉球弧と南琉球弧は異なる運動をしていると見られている。
図2 南西諸島の1年あたりの水平移動速度(1999〜2001年の平均)。中国の上海を基準としている。上海基準で見ると、南西諸島はほぼ南方向に移動している。移動速度は沖縄本島付近で年間4cm、八重山諸島で年間5cm、与那国島で年間7cmである。これは沖縄トラフの拡張を表している。つまり南にいくほど沖縄トラフの拡張速度が大きい。
図3 南西諸島のブロックモデル。歪速度で分類すると、奄美大島付近(奄美ブロック)、沖縄本島から宮古島(沖縄ブロック)、八重山地域(八重山ブロック)の3つに分けられる。
図4 南西諸島に平行な方向の伸び(歪)の大きさは、10〜30ナノストレイン/年(ナノは10の-9乗、ストレインは歪のこと)である。これは何を意味しているかというと、沖縄本島-宮古島は距離約300kmであるが、この2つの島が1年間に3〜10mmずつ離れていることを示している。
図5 各ブロックの回転運動。
それぞれのブロックは反時計まわりに回転している。角速度(回転の速度)は20〜200ナノラジアン/年(ナノは10の-9乗、ラジアンは角度の単位)である。これは、この回転が100万年続くと島の向きが1〜10度回転することになる。
中琉球弧と南琉球弧はケラマギャップを境に地質構造が異なるが、GPS解析で求めた歪速度分布では特にブロック境界になっているわけではない。よって中琉球弧と南琉球弧は地質構造は異なるものの、現在、沖縄本島と宮古島は一体となって動いていると考えられる。
参考文献:M.Nakamura, Crustal Deformation in the central and southern Ryukyu arc estimated from GPS data, Earth Planet. Sci. Lett., 217, 389-398,2004.