中部琉球海溝でM8クラス地震が起こった場合の津波

 これまで琉球海溝には巨大地震を発生しうる場所である固着域がなく、巨大地震は起こらない場所とされてきました。しかし最近の研究から、沖縄本島南東沖の琉球海溝に固着域があり、琉球海溝でも巨大地震が発生するかもしれないことが分かってきています。そこで、この固着域が動いた場合に沖縄本島を襲う津波がどのくらいになるのか計算しました。

 固着域の幅は約50kmと推定しています。固着域の長さは不明ですが、琉球海溝に沿って延びていると仮定して、長さ200kmと設定しました。すべり量は20mとしています(M8.5)。

 予想される津波は沖縄本島の東海岸全域で最大波高が15m以上となります。湾奥など局所的に20m以上となる場所もあります。海溝と反対側の那覇、北谷、名護港でも8〜10m程度の津波が押し寄せます。
 沖縄の場合、海溝から陸までの距離が約100kmと、東北地方(日本海溝までの距離が約200km)と比べて約半分です。すると津波の到達時間も東北地方の約半分の15分程度です。

 ちなみにこの断層モデルは一つのモデルであって、実際にはもっと海溝軸方向に長く伸びている可能性もあります。また断層がもっと陸側まで延びている可能性もあります。この計算結果はあくまでも一例です。

 今のところ、沖縄本島付近の琉球海溝で過去にこれほどの巨大地震・津波が発生したかどうかは分かっていません。しかし沖縄では古い文献による地震津波の記録が約300年前以降しかなく、それ以前に津波が押し寄せたかどうかは分かりません。そう考えると、地質調査等から過去の津波を調べる事が必要になってきます。
 また、固着域の分布もまだ分かっていません。海底地殻変動観測で固着域が琉球海溝に沿ってどのように分布しているのかを調べることが重要になってきます。


図1:琉球海溝と固着域の位置(オレンジ色の領域)。海溝に沿ってどのように分布しているのかは分かっていない。星印は現在行っている海底地殻変動観測点の位置。



図2:M8.5の地震が発生した場合(長方形が断層)の最大波高分布。





図3:最大波高分布。沖縄本島周辺を拡大。


図4:沿岸での最大波高。東側海岸の地点を表示。


図5:沿岸での最大波高。西側海岸の地点を表示。