琉球海溝での浅部超低周波地震の分布
 

九州・沖縄に設置されている防災科学技術研究所広帯域地震観測網(F-Net)、および台湾・中国に設置されている広帯域地震計(IRIS)の地震波形データを解析し、2002年1月から2013年9月に南西諸島で発生した「ゆっくり地震」の一種である浅い超低周波地震の分布を決定しました。

  その結果、超低周波地震は琉球海溝(南西諸島海溝)で約12年間定常的に活発に発生していることを明らかにしました。その中で西表島から与那国島の南方沖で発生する「超低周波地震」は、西表島直下で約半年おきに繰り返し発生するスロー地震によって活発化することも判明しました。これは「超低周波地震」の発生域が小さな応力で滑りやすくなっていることを示しています。また超低周波地震の活動は、巨大津波が度々襲来してきた石垣島から宮古島付近では少なく、巨大津波の襲来が見られない沖縄島から奄美大島にかけて多く発生しています。プレート間カップリングの強さが関与しており、プレート間カップリングの弱い地域では、海溝に近い浅いところで超低周波地震などの「ゆっくり地震」により歪が適時解放されている場所が多いのではないかと考えています。


図1 琉球海溝で2002年から2013年に発生した超低周波地震の分布図(赤丸)。黄色い点線の長方形領域で発生する超低周波地震は、西表島繰り返しスロー地震により繰り返し活発化する。また、過去の大津波発生域(1771年八重山地震津波波源域、黄色い長方形)付近では超低周波地震の発生が少ない。

参考:Nakamura, M. and N. Sunagawa (2015), Activation of very low frequency earthquakes by slow slip events in the Ryukyu Trench. Geophysical Research Letters, doi:10.1002/2014GL062929.