八重山の地殻歪が変化すると、西表島の地震が活発化する

背景

西表島周辺は地震活動が活発な地域です。今年も3月1日にM5.6の地震が起こりニュースになったことは記憶に新しいと思います(図1)。この地震の原因を探るために八重山諸島の地震活動を解析したところ、西表島南部の地震活動が2002~2005年と2013年以降に活発化していたことが明らかになりました(図2)。地震活動を長期的に活発化させる要因として、周辺での大地震・群発地震活動とゆっくり地震(スロースリップイベント、アフタースリップ)による地殻の歪変化(地盤の変形)が考えられます。しかし、そのような地震活動による歪変化が西表島で地震活動を活発化させたのかどうかは分かっていません。

そこで活発化の原因を探るため、国土地理院のGNSS(全球測位衛星システム)観測データを使って西表島を含む八重山諸島での地殻の歪変化を調べました。地震活動はETASモデル(地震活動の標準モデル)を用いて、活動の変化が起こった時期を分析しました。

図1 八重山諸島の地図。点線の領域は地震活動の変化が見られた地域を示す。

 

図2 地震活動変化と長期歪(数年単位での地殻の変形)のグラフ。

 

成果

地殻の変形を計算した結果、八重山諸島は常に北東-南西方向に伸張している中で、約半年の周期で南北方向の収縮と伸張を繰り返していました(図3、図4、アニメーション1)。これは西表島直下で繰り返すスロースリップイベントによる歪の蓄積と解放を反映しています。

その中で2002年頃、八重山諸島の変形が一時的に大きくなりました(図2、図4)北西-南東方向に伸張し北東-南西方向に収縮する変形が強くなりました。さらに2012年以降、今度は北東-南西方向に伸張する変形が強くなりました(図2、図4)。これら2002年と2013年におこった変形の増加はそれぞれ、2002年1月後半と2013年5月中旬ごろに始まった西表島南西部の地震活動活発化の時期と一致しています(図2)。

これらの歪増加はそれぞれ異なった要因によって生じています。2002年の歪増加は与那国南部のアフタースリップで生じました。2013年の歪増加は与那国北方沖の沖縄トラフで発生した群発地震活動によるものです。

2018年現在でも強い変形(歪速度)の状況が弱まりつつも継続しています。2018年3月の西表島南部の地震も、この強い変形の状況下で発生したと考えられます。

図3 長期歪(数年単位での地殻の変形)と短期歪(数ヶ月年単位での地殻の変形)のグラフ。

 

図4 八重山の変形のパターンの模式図

 

意義・課題

今回の研究から、八重山諸島では地震活動の変化を通して地下の歪変化を捕らえることができることがわかりました。

もう一つは、西表島群発地震の発生原因を探る鍵が見つかりました。1991年~1993年に西表島で群発地震が発生しています。しかし、なぜ群発地震が発生したのかは未だ謎のままです。西表島付近の地震活動が歪変化に敏感に反応することから考えると、西表島群発地震が発生した当時も、この地域で歪速度の変化があったのかもしれません。

 

【論文名】

著者:Nakamura M. and Kinjo, A.(中村衛・金城亜祐美)

題目:Activated seismicity by strain rate change in the Yaeyama region, south Ryukyu.

論文誌: Earth, Planets and Space (2018) 70:154.

DOI:10.1186/s40623-018-0929-y

アニメーション1:1998年から2017年までの八重山諸島の移動と変形。移動を20万倍、変形を10万倍に拡大して表示。

リンク

太平洋津波警報センターを見学しました。

9月25日から10月5日までおこなったハワイ巡検(琉大地学twitter)の中で、オアフ島にある太平洋津波警報センター(PTWC)と国際津波情報センター(ITIC)を訪問しました。

この2つの組織はパールハーバー内のFord Islandにあります。ここは米軍基地内のため、訪問するには事前に基地内立ち入り許可申請が必要です。それでも許可が下りるかどうかは不確実で、今年も訪問日直前に許可が下りました。

 

訪問する前に、Pass and ID centerで入域許可申請をします。立ち入る際の要求が年々厳しくなっています。今回は学生が多かったので手続きに1時間以上かかりました。

許可が下りた後、Ford Islandに渡ります。橋を渡ってしばらく走るとNOAA Daniel K. Inouye Regional Center の建物が見えてきます。PTWCとITICはこの中に入っています。

まずITICで、Laura博士から津波についての講義を受けました。訪問する直前に発生したインドネシアのスラベシ島でのM7.5地震で発生した津波被害について説明を受けました。

そのあと、PTWCで津波警報を出すシステムについてWeinstein博士から解説を受けました。PTWCでは世界各地に配置された地震観測網のデータを使って震源決定およびマグニチュードの決定を行い、それを基にした津波数値計算結果を使って津波情報(各地の津波高さ)を流します。仮想地震を用いて、津波情報を出すまでのプロセスを見せていただきました。

台湾北部で断層調査をしました(2018年)

昨年と同様、台湾北部の金山で地中レーダを使った地下構造探査をおこないました。この場所は1867年基隆地震を起こした山脚断層の北部にあたります。

海岸沿いの砂丘です。山地と平野の境に住居が分布しています。そのあたりを山脚断層が通っています。

 

地中レーダの調査風景です。初日は雨、それ以降は30度を超える炎天下のなか、調査を行いました。測線に沿ってひたすら地中へ電磁波を送受信して計測をおこないます。背後には綺麗な海が見えます。調査時は波が高く、サーフィンをやっていました。

向こうの方に金山の街が見えます。温泉街です。

海底地殻変動でわかった琉球海溝沈み込みの複雑さ

①プレート間カップリングと琉球海溝

海溝で海洋側のプレートが大陸側のプレートの下に沈み込むとき、もしそこに双方が強く固着した場所(カップリング領域)があると、大陸側のプレートもそれに引きづられて収縮し歪(ひずみ)が蓄積します。やがて、その歪に耐えきれなくなると大陸側のプレートは反発し、もとの状態に戻ろうとします。このとき巨大地震が起こります。

 プレート間地震の模式図。大地震と大地震の間のときは、大陸側のプレートが海洋側のプレートに押されて図の左側に動く。海溝から離れるほど動きは小さいので、海溝と陸の間では大陸側のプレートは収縮している。大地震発生時には、反発して、大陸側のプレートは海溝側に大きく移動する。

 

この考えでいくと、海洋側のフィリピン海プレートが大陸側のユーラシアプレートの下に沈み込んでいる琉球海溝(南西諸島海溝)では、巨大地震が発生しても不思議ではなさそうです。しかし、これまで琉球海溝ではプレート間カップリングが小さく海溝型の巨大地震は起こりにくいと考えられてきました。

その一番の根拠は、南西諸島が動いている方向です。島々に設置されたGNSS観測点がユーラシアプレートに対してどの方向に動いているのかを見てみると、南西諸島の島々は南~南東方向、つまり海溝側に動いています。もし琉球海溝にプレート間カップリングがあれば、沈み込むフィリピン海プレートの動きに押されて海溝とは反対方向、つまり北~北西方向に動くはずです。このことから、琉球海溝では海側から沈み込むフィリピン海プレートと陸側のユーラシアプレートとの間にプレート間カップリングはない(固着した場所はほとんどない)と考えられてきました。

 

国土地理院のGNSSでみた西南日本(左)と南西諸島(右)の水平変位(2017年5月~2018年5月)。上対馬を固定している。西南日本では南海トラフでのフィリピン海プレートの北西方向への沈み込みに伴って、陸側のプレートが北西方向に移動している。しかし、南西諸島では、フィリピン海プレートが北西方向へ沈み込んでいるにもかかわらず、南西諸島は南東~南方向に移動している。

 

②海底地殻変動観測から判明した沖縄島付近のプレート間カップリング

しかし沖縄本島沖で行われた海底地殻変動観測からは、琉球海溝の海溝軸付近に置かれた海底局が沖縄島の動きとは異なり北西方向に近づくセンスで動いていることがわかりました(Tadokoro et al., 2018GRL)。これは海底局近傍の海溝軸付近のプレート間にある程度の強さを持つカップリングがあることを示しています。

沖縄島付近のGNSS水平変位(黒矢印)と海底局(RKAとRKB)の変位(赤矢印)。大陸側に対する動きを示している(アムールプレート固定)。

 

③明らかになってきた琉球海溝沈み込み帯の多様なカップリング

最近研究が進展することにより、琉球海溝でのプレート間カップリングが場所ごとに異なり、非常に多様性に富んでいることが分かってきました(Nakamura, 2017 EPS)。

 

琉球海溝(沖縄島付近から八重山諸島)での沈み込んだプレート面上で起こる様々なスロー地震とカップリングの状況。Nakamura (2017 EPS)の図に今回の成果である沖縄島付近の固着域を加えた。

 

まず琉球海溝の浅部(深さ15 kmまで)にはカップリングのある領域(固着域)が分布しています。中部琉球海溝では今回検出しました。南部琉球海溝ではまだ検出されていませんが、1771年八重山津波の波源域にあたっていることから、南部琉球海溝でも海溝軸付近には固着域が分布している可能性があります。

琉球海溝のやや深部(深さ15~50 km)では、中部琉球海溝ではスロースリップイベントが深さ15~25 kmで発生し、その近傍で低周波地震ー超低周波地震が発生しています。一方、南部琉球海溝の場合、深さ15~30 kmより深いところで低周波地震ー超低周波地震が発生しています。スロースリップイベントはそれよりも深いところ(深さ30 km以深)で発生しています。また、中部琉球海溝と南部琉球海溝に共通して、スロースリップイベントや低周波地震ー超低周波地震が起こっている領域と普通のプレート間地震が起こっている領域は重なっておらず、住み分けがみられます。

しかし琉球海溝でのカップリングの状態が大きく空間変化していることは最近分かったばかりで、この空間変化が互いにどのような影響を及ぼしあっているのか、そして海溝付近にあるカップリング領域にどのように影響を与えているのか、わかっていません。これらは沖縄で将来起こるであろう大地震のメカニズムを探る上で欠かせません。

 

海底地殻変動観測の成果をプレス発表しました

名古屋大と実施している沖縄本島沖での海底地殻変動調査成果が論文に掲載されたので、プレス発表しました。

プレス発表資料

陸上からの観測ではプレート間に固着域があるようには全く見えない琉球海溝にも、海溝付近には固着域が広がっていることを海底地殻変動調査をおこなって初めて明らかにしました。

 

■沖縄タイムスの8月2日朝刊

「巨大地震、沖縄でも可能性 本島南沖にプレート間「固着域」 琉大など発見」

沖縄タイムス記事

 

■NHK沖縄の8月2日18時10分からのニュース

「沖縄南方沖で巨大地震の可能性」

NHK記事

 

■RBC琉球放送の8月3日ニュース

「巨大地震の恐れも 琉球海溝沿いで固着発見」

巨大地震の恐れも 琉球海溝沿いで固着発見

■琉球新報の8月31日ニュース

沖縄も巨大地震の恐れ 本島南沖に「固着域」

琉球新報記事